認知症と「怒り」の向き合い方

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認知症の方が怒る理由

突然怒鳴られたり暴言を浴びせられたりすると、ご家族は大きなショックを受けます。「どうしてそんなことを言うの」と悲しくなることもあります。
しかし、これはご本人の「性格」や「悪意」ではありません。
認知症が進行すると、感情をコントロールする脳の前頭葉の機能が低下し、普段であれば抑えられるはずの怒りや不安が、ちょっとしたきっかけで溢れ出してしまいます。これは「感情失禁」と呼ばれる、病気による症状のひとつです。

また、認知症の方は常に強い不安と混乱のなかにいます。
「ここはどこだろう」「さっき何をしていたのだろう」
その見えない恐怖から自分を守ろうとする防御反応が、攻撃的な言葉として出てくることがあります。怒りの裏側には、深い不安と孤独が隠れているのです。

周囲との関わりのなかで怒りが高まることもあります。本当はこうしたい、ああしたい、という思いがありながら、それを言葉にできない、または聞いてもらえない時、人は誰しも怒るものです。認知症が進行すると、このような状況に陥りやすいかもしれません。ご家族に余裕がなくなりイライラや怒りが大きくなると、「合わせ鏡」のように認知症の方にもその影響が及ぶことがあるかもしれません。

認知症のタイプによっても傾向が異なります

前頭側頭型認知症

感情の抑制が早い段階から難しくなります。

レビー小体型認知症

リアルな幻視への恐怖が興奮につながることがあります。

血管性認知症

感情の起伏が激しくなりやすくなります。

アルツハイマー型認知症

睡眠障害からくる疲れやイライラが影響することもあります。

ご家族も「怒り」を感じていいのです

介護するご家族だって、人間です。
何度も同じことを聞かれ、暴言を浴び、それでも笑顔で対応し続けることは、誰にとっても限界があります。「もう嫌だ」「なぜ私だけがこんな思いを」と感じるのは、当然の感情です。
むしろ怒りを感じているということは、それだけ真剣に向き合ってきた証でもあります。どうかご自分を責めないでください。

まず試してほしい、二つのこと

怒りがこみ上げてきたとき、すぐに試せる方法を2つご紹介します。

その場から離れる

怒鳴り合いになりそうなとき、まずは静かにその場を離れましょう。別の部屋へ移る、外の空気を吸いに行くだけで構いません。
認知症の方は、数分後にはその出来事自体を忘れていることがほとんどです。時間を置くことで気持ちが落ち着き、ご本人も穏やかな状態に戻りやすくなります。

「逃げる」のではなく、お互いのために距離を取ることは正しい対応です。

感情に乗らず、声のトーンを落とす

言い返したい気持ちをぐっとこらえ、低く穏やかなトーンで短く話しかけてみてください。強い口調で返すと、ご本人は「攻撃された」と感じてさらに興奮してしまいます。内容よりも「声の雰囲気」が伝わりやすい段階にある方も多いため、ゆっくり、やさしいトーンで接することが、興奮を鎮める助けになります。

怒りは、限界のサインかもしれない

怒りの感情が続いているとき、それは「もう休みが必要ですよ」というご自身からのサインかもしれません。疲れた状態では、どんなに愛情深い人でも、穏やかに接し続けることはできません。
地理的・時間的な問題もあるかもしれませんが、認知症カフェ(オレンジカフェ)やつながりの場への参加は、同じ立場の人たちとの出会いになります。さらに介護保険によるショートステイやデイサービスを活用して、意識的に離れる時間をつくることは「手を抜く」ことではなく、長く介護を続けるための大切な知恵です。

お一人で抱え込まず、まずはご相談ください

「こんなこと誰にも言えない」と、怒りや罪悪感を一人で抱えてしまうご家族がたくさんいます。しかし、話すだけでも気持ちは楽になります。
なかやまメモリー・メンタルクリニックは、認知症専門医が在籍し、高齢者の精神疾患に幅広く対応するクリニックです。対話を大切にした診療で、ご本人の治療だけでなく、介護するご家族のご相談にも対応しています。「うまくやれない」「限界かもしれない」そんな気持ちも、どうぞそのままお話しください。

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